未来のデジタルサイネージの話をしよう

こんにちは!ライターの阿部です。
先日、東京で開催された「デジタルサイネージ オープンラボVol.1」に参加してきました。デジタルサイネージがこれからどうなって行くのか、私たちの生活にどんな変化をもたらすのか。とても興味深い話でしたので、内容をまとめつつレポートしていきたいと思います。

日本のデジタルサイネージの歩み

デジタルサイネージはこうやって発展してきた

デジタルサイネージの始まりは「情報をただディスプレイに映し出す」ものでした。USBなどの記憶媒体にデータを保存してディスプレイで再生する「スタンドアロン型」と呼ばれるタイプで、その機能から見ると「紙の広告がディスプレイに変わった」という程度のものでした。
そこからインターネット環境が整備され、デジタルサイネージもネットワークにアクセスできるようになり、現在のベースとなる「ネットワーク型」が登場します。遠隔操作で広告を更新することが可能になり、デジタルサイネージが活用できる場所が一気に広がりました。さらにタッチパネル技術によって「見る側が知りたい情報にアクセスする」という双方向(インタラクティブ)のやりとりができるようになりました。現在では商業施設や観光案内所でタッチパネル式のデジタルサイネージを見ることも多くなりましたね。
 
施設の案内表示
 
ディスプレイも高性能化し、精細で臨場感のある表現が可能になりました。その結果、空間演出やアートの分野でデジタルサイネージを活用する事例も見られるようになりました。私たちの生活のなかでデジタルサイネージが活躍するシーンは着実に増えてきています。

日本のデジタルサイネージ認知度はまだ低いまま

そうは言っても、日本の多くの人にとってはデジタルサイネージはまだまだ身近な存在とは言えません。「街中で見かけるけど、ただの“電子看板”でしょ?」という認知しかされていないのが日本でのデジタルサイネージの現状です。確かに私たちの日常生活の中のデジタルサイネージというと「広告や観光情報を流すもの」というイメージが先行します。「紙のポスターがディスプレイに変わっただけ」という認識が大多数でしょう。通信環境がいまほど発達していなかった数年前までは、デジタルサイネージの用途といえば広告を流すことが主な役割だったのである意味仕方ないことなのかもしれません。
しかし現在、これまでのデジタルサイネージの概念をガラリと変えてしまうぐらいの“進化”が起きはじめています。そしてここから数年のうちに、デジタルサイネージは私たちの生活になくてはならない存在になっていくでしょう。その根拠をいくつかの事例をふまえて説明していきましょう!

5GとAIでデジタルサイネージが進化する

通信技術の進化で「リアルタイムな情報」を拾えるように

『5G』という言葉を聞いたことがありますか?5Gとは2020年の実用化に向けている次世代の通信技術で、『超高速かつ大容量の通信』が可能になります。その速さは現行のLTE(4G)のなんと100倍!これまでよりも圧倒的に早く大容量のデータを通信し、しかもあらゆる端末を同時に接続することができるため、この5G技術により身の回りのあらゆるアイテムがワイヤレスでネットワークに繋がることになると言われています。5Gについてわかりやすく
5Gによって通信技術が飛躍的に向上すると、「リアルタイムな情報」を集め、その情報をもとにしたコンテンツをデジタルサイネージで表示させることが可能になります。「リアルタイムな情報」とは、たとえば「気象情報」「車や人の流れ(道や場所の混雑状況)」などが例として挙げられます。ひとつ事例をご紹介します。

ボディシャンプーのメーカーが打ち出した広告です。大型ディスプレイに映ったモデルが、雨が降り始めたと同時にシャワーを浴び始めます。実際の天気と連動したこの広告、道行く人も足を止めて見入っていますね!この広告が流れたのはニューヨークのタイムズスクエアという場所ですが、周囲の気象情報をリアルタイムに収集し、雨が降り始めたタイミングとデジタルサイネージの広告を連動させています。
これは『ダイナミックDOOH』と呼ばれる広告手法で、周囲のリアルタイムな環境変化に応じてダイナミックに広告を切り替えることができます。その場に居合わせた人の感情により近い広告表現ができ、心に響く訴求が可能です。これからの広告表現の主流となると考えられていますが、これまでは比較的大規模なプロモーションで用いられることがほとんどでした。しかし5Gの実用化によってもっと小規模なプロモーション、あるいは個人でもダイナミックDOOHによる広告表現が可能になっていくと予想されています。

そこに居合わせた人が同じ体験を共有できる

デジタルサイネージは多くの人に向けてコンテンツを発信できます。その特徴を活かし、デジタルサイネージをきっかけにその場にいる人が同じ体験をするという新しい広告表現も注目を集めています。
新宿にある「ユニカビジョン」の例をご紹介します。行ったことのある方も多いと思いますがこの場所にはひときわ目を引く巨大なディスプレイがビルの一面を覆っています。この「ユニカビジョン」では定期的にアーティストのライブ動画を流しており、多くのファンが広場に集まります。そしてとてもおもしろいのがこの「ユニカビジョン」に対応したアプリ「VISION α」です。
 

このアプリはユニカビジョンに流れるライブ音源をスマホで聴くことができるというものですが、まさにデジタルサイネージが「その場に居る人が同じ体験を共有する」きっかけとなっている事例です。会ったこともない人と同じ場所で同じコンテンツを共有し、本物のライブのように盛り上がるという特殊な経験は、SNSなどが発達した現代では逆に新鮮なものとして受け入れられています。
こちらは、みなさんご存知の楽天が楽天イーグルスの球場で企画した観客参加型ゲームです。

通信技術の向上によって、これらの事例のように大勢が同じ場所で同じ体験を共有することが可能になります。これらの広告表現は「場を共有する」という経験を通じて人々に“感動”を与え、より心に残る訴求ができるわけですね!

AI技術でデジタルサイネージと“コミュニケーション”が可能に

最近、ニュースで話題に上らない日がないくらい、AI技術(人工知能)は驚異的なスピードで発展しています。そしてデジタルサイネージにAIを応用した事例もすでに実用化されはじめています。
こちらの動画をご覧ください。
 

アメリカの車の広告です。ディスプレイに映し出された男性と、ディスプレイの前に立った人がコミュニーケーションをしています!ポップコーンを投げたり、小さい子供とにらめっこをしたり…同じ男性が再びディスプレイの前に立つと「なんだ!また君か!」と言っているから驚きです。
このデジタルサイネージにはカメラが搭載されており、ディスプレイの前に立った人の年齢、性別、表情、仕草をリアルタイムに測定し、それに応じたコンテンツを切り替えているのです。さらには顔まで記憶することもできるため同じ人が再び広告の前に現れると「ひょっとしてこの車が気になるの?」と気の利いた言葉をかけてきます。「この広告はまさに自分に投げかけられている!」と感じるでしょう。

まとめ:デジタルサイネージが日常にとけこむ日

ここまでデジタルサイネージの未来の姿を紹介してきましたが、みなさんはどう思われましたか?
「こんなこともできるんだ!すごい!」
「すごいけど、まだまだ先の話でしょ?」
「私たちの生活には直接関係ないんじゃないの?」
いろんな感想があると思いますが、間違いなく言えることはいま紹介した技術は数年後には当たり前になるということです。インターネットやAIは、これまで私たちが想像もできなかったようなことをすでに実現しはじめています。猛スピードで進む研究や技術向上によって、いまは最先端技術と呼ばれているものも近い将来に私たちの生活にも間違いなく普及していくでしょう。
今回のセミナーを通じて、デジタルサイネージは一昔前のスマホのようなものだと思いました。ほんの10年ちょっと前までは、いわゆるガラケーと呼ばれるものが主流でした。しかしiPhoneという革新的な商品の登場で、あっという間にスマホが広がっていきましたよね。いまでは日常でもビジネスでも、スマホはなくてはならない生活の一部です。デジタルサイネージも同じで、数年後には私たちの生活にとけこんでいるだろうと思います。上で紹介したような私たちの生活をさらに快適にする技術がすでにデジタルサイネージに応用されはじめているのですから、決して未来の話ではありません。
この記事をきっかけにデジタルサイネージに少しだけでも興味をもっていただければ幸いです!

  • 5GとAIがデジタルサイネージを変える
  • リアルタイムな情報をもとにコンテンツが変わる『ダイナミックDOOH』がこれからさらに普及する
  • デジタルサイネージは単なる広告の枠を越え、人を集め、特殊な体験を提供する新たなツールになる
  • デジタルサイネージはスマホのように身近な存在になる

 

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