駅や地下街、街頭などの公共空間に増え続けているデジタルサイネージですが、平時は広告を表示するサイネージを防災や災害時の情報発信や情報支援ツールとして活用しようという動きが広がっています。例えば、インバウンド向け災害情報発信や公共空間での緊急時の誘導ツールとして活用しようという流れです。今後、さらに重要な役割を期待されていくのかもしれません。
今回は、防災や災害時にデジタルサイネージを活用するための取り組みについて、具体的事例や取り組みを中心にご紹介します。
事例1)映像送信や情報案内のツールになる『スマート街路灯』
街路灯にカメラやスピーカー、ディスプレイを備え付けた『スマート街路灯』は、NECが開発した次世代街路灯。
平時には街角を照らすLED街灯ですが、非常時には備え付けカメラで撮影した現地映像を送ったり、街角を通り行く人々に情報提供するデジタルサイネージとしての役割を果たすというものです。防災センターにあるPCから、サイネージ部分のテキストは発信内容を自由に作成でき、カメラも任意の地点のカメラを自由に遠隔操作できるそうです。
2019年には東京都杉並区に、通信に対応した照明、水位センサー、カメラ、マルチセンサー(照度・湿度・温度・振動・傾斜)などの機能を備えたスマート街路灯を区内12箇所に設置して実証実験を実施。
今後は実験の成果を生かしつつスピーカーなどの機能も付加し、センターから街灯設置場所付近にいる人々に音声で案内する機能の実用化もめざしているそう。また、基地局不足に悩む5G通信の基地局設置場所候補としても注目されているようです。
事例2)エリア防災にデジタルサイネージを活用
三菱地所が開発中の東京丸の内エリアでの防災に関する取り組みとして、デジタルサイネージを活用した『災害ダッシュボード3.0』の実証実験を行っていました。丸の内エリア内には約100台のデジタルサイネージ『丸の内ビジョン』が設置されており、有事にはローカル情報発信や帰宅困難者受け入れ施設の開設、満空情報などを流します。同時に、PCやスマートフォンから利用できる「WEB版」も用意し、エリア外からも丸の内エリアの情報収集を可能にする試みもされていました。
こうした取り組みは2011年の東日本大震災時の経験から生まれたもので、当時はすべてのデジタルサイネージをNHK放送に切り替えたそうです。こうした経験をもとに、実証実験ではライブカメラの映像を表示したり、テキスト情報による避難受け入れ施設情報などを表示。さらに画面下の二次元バーコードを読み取れば、最寄りの避難所が地図上に表示される仕組みも導入されました。さらに、自動翻訳による日英中韓の四カ国語配信も行われるなどインバウンド時代にも対応し、『街のIT設備で街にいるあらゆる人々を助けたい』という気持ちが感じられました。
事例3)自然エネルギーで稼働するデジタルサイネージシステム
同じく東日本大震災を教訓として、大日本印刷はデジタルサイネージを活用して災害や防災に関する情報の提供に取り組んでいます。
こちらは東日本大震災時の計画停電でデジタルサイネージが機能停止し、非常時の情報発信ができなかった経験をもとに、自然エネルギーを利用したデジタルサイネージを開発しました。2019年には、災害発生時に太陽光発電のみで稼働する「環境配慮型屋外液晶デジタルサイネージ」の実証実験を開始。高輝度液晶とリチウムイオン蓄電池の組み合わせで、日照がなくても3日間稼働させ、画面には緊急地震速報の情報を5カ国語(中国語の繁体字と簡体字を含む)で表示しました。
このシステムは多様な災害情報を提供することができる上、災害時の現地映像を届けるカメラや放送波を組み合わせる多機能化にも対応可能だそうです。
事例4)既存デジタルサイネージに災害関連情報配信機能を付加
八重洲地下街では、地下街内に設置した52面のデジタルサイネージと3面のマルチディスプレイを『Alertmarker+(アラートマーカー)』と組み合わせることで、緊急地震速報や防災メールに連動した災害関連情報の自動配信をスタートさせています。
簡単に既存のデジタルサイネージに災害情報をプラス!
『Alertmarker+(アラートマーカー)』は、現在使用しているデジタルサイネージのHDMIケーブルに接続するだけで、映像の邪魔にならない位置に災害情報や生活支援情報を配信することができます。Lアラートや防災メールとの自動連携による緊急同報配信が可能で、被災時の避難情報提供や情報発信業務を負担軽減します。
特徴は、既存設備に付加するだけで、設備側は変更の必要がない点、本来の広告などの映像表示を妨げない点、エリアメールや防災メールと自動連携されている点など、多くの特長があります。
DDSでも『Alertmarker+』を取り扱っていますので、お気軽にお問い合わせください。
事例5)ラジオとデジタルサイネージを連携して防災
阪神淡路大震災の被災地だった神戸市では、地域の事業者間連携による津波防災への取り組みとして、国内外で初の「ラジオ放送と放送設備・デジタルサイネージを連携させたシステム」を津波避難の誘導訓練で設置。ラジオ関西とともに実証検証に取り組みました。この実験では、ラジオ放送の音源にID信号を埋め込み、施設内の放送設備やデジタルサイネージを起動させ、インターネット回線が切断された状態でも災害情報を配信する試みです。
デジタルサイネージに災害や防災対応機能を付加して地域貢献
5つの事例を紹介しましたが、デジタルサイネージは広告や宣伝を担うだけではなく、地域に災害が発生すれば災害情報や避難情報などを発信することで、人命救助に貢献できます。特に『Alertmarker+』は、後付けするだけで緊急時に災害情報などを発信できるので、店頭などですでにデジタルサイネージを導入しておられる方には、身近な地域貢献の方法として検討に値するのではないでしょうか。もちろん具体的に検討する際には、ノウハウを持ったプロに相談されることをおすすめします。お気軽にDDSへご相談くださいませ。