いま、デジタルサイネージを利用したマーケティングが注目を集めています。これからのビジネスを考えていく上で見逃せない、デジタルサイネージならではのメリットを紹介します。
現代のマーケティングで大切なこと
消費者のニーズが多様化した現代では、一昔前のようにテレビや交通広告で大々的に宣伝する手法は必ずしも効果的とは言えません。それに加え、インターネットの普及で消費者が自らほしいモノを探し、自らの意思で購入することが当たり前になっています。このような現代社会でマーケティングを考える際、「どうすれば消費者の行動を促せるか?」という点が重要になってきます。
例えば、暑い夏の日に「喉がかわいた」と思いながら街を歩いている人がいたとします。するとたまたま通りかかったカフェのサイネージディスプレイに「冷たいビールが冷えてます!」という広告が流れていたら、売上に結びつく可能性は一気に上がると思いませんか?
本当に効果的なマーケティングは、この例のように「必要としている人にピンポイントでコンテンツ(情報、サービス)を提供すること」です。そして、こうしたマーケティング手法はAI技術やインターネット環境の向上によってすでに実用化されています。その中で重要な役割を果たすのがデジタルサイネージです。事例を紹介しながら解説していきたいと思います。
デジタルサイネージがマーケティングに効果的な理由
いまの時代のマーケティングにデジタルサイネージが注目されているのはなぜなのでしょうか?デジタルサイネージの特長から見ていきましょう。
インターネットに接続できる
デジタルサイネージは「街に飛び出すインターネット」とも呼ばれますが、まさにそのとおり、インターネットに接続することができます。つまり、外部との情報のやりとりが可能なのです。さまざまをコンテンツをリアルタイムで受信し、状況に応じて流す内容を変えることができます。冒頭で述べたような使い方のように、その場にいる人のニーズにリアルタイムでマッチした情報提供ができるのです。
スマートフォンとの連携
たとえばQRコードをデジタルサイネージに表示させ、スマートフォンで読み込むという使い方があります。クーポンを発行したり、専用アプリと連携して体験型のコンテンツを提供するなど、幅広いサービスが考えられます。いまや誰もが持ち歩くまでに普及したスマートフォンを利用することで、デジタルサイネージはより個人的な体験やサービスを提供できるのです。
AI(人工知能)との連携
近年はAI(人工知能)を搭載したデジタルサイネージも実用化されつつあります。たとえば、年齢や性別などを認識して表示する広告を変えることが可能です。駅のような公共交通機関では音声認識型のデジタルサイネージも実証が進められており、話しかけると行きたい場所を音声付きでディスプレイに表示する「案内サイネージ」もあります。AI技術の活用により、デジタルサイネージはより個人のニーズに合わせたコンテンツを提供することができます。
デジタルサイネージのマーケティング活用事例
では、実際にマーケティングにデジタルサイネージが活用されている事例を見ていきましょう。
実店舗への送客を実現した「サイネージからのクーポン発行」
デジタルサイネージからクーポンを発行することで、実際の店舗への送客へつなげることも可能です。2015年、キリンビールとサークルKサンクスが名古屋駅で実施したクーポン発行サービスの実証では、クーポン取得者の実に86%が実店舗でクーポンを使用するという高い送客効果を発揮しました。
デジタルサイネージを見てアプリを起動すると、Blutoothによるプッシュ通知で特設サイトへアクセス。そこでアンケートに答えればビールの無料クーポンがもらえる、という仕組みです。この実証がおこなわれたのは名古屋駅のコンコース。たくさんの人が集まる生活導線上でコンテンツを発信することで、駅から自宅までに必ずあるコンビニでのクーポン利用につながったのです。場所の特性を活かした「移動者マーケティング」の成功事例と言えます。
専用アプリと連動した「バーチャル試着体験」
アパレル業界もデジタルサイネージによる新たなマーケティングがはじまっています。アパレル大手のジーユー(GU)は、今年3月にオープンした旗艦店「渋谷店」にデジタルサイネージを導入し、スマホアプリと連携した新たなサービスを提供しています。ユーザーの顔写真からアバターをつくり、服の色やサイズなどをリアルタイムでレビューすることができます。スマホアプリと連携しているため、さまざまなコーディネートをどこでも楽しむことができます。お店での服選びに迷った場合でもあとでじっくり検討してからECで購入することができ、満足度の高い購買体験につながります。
AI×デジタルサイネージで実現する「その人にぴったりの広告」
福岡市に本社を置く大手スーパー「トライアルホールディングス」は、福岡市内の旗艦店に1500台のAI搭載カメラと210台のデジタルサイネージを設置しています。AI搭載カメラは買い物客の性別や、買い物カートの有無を識別します。そして認識した買い物客の情報に応じて、店内のデジタルサイネージに「ピッタリな広告」を表示させることが可能です。たとえば、飲み物コーナーを通った買い物客がカートを持っていれば「24缶入りのビール」をすすめ、カートを持っていない場合は「6缶入り」をすすめる、といった具合です。さらに過去の購入履歴に基づいて購入されやすい商品の広告を表示させることもできます。
まとめ:デジタルサイネージで『マンツーマン』のマーケティング
消費者の購買を促すには、「個人のニーズに合ったコンテンツ」を提供することが重要です。いわばマンツーマンのマーケティングです。AIをはじめとするIT技術とデジタルサイネージを掛け合わせることで、それらはすでに実現可能になっています。この記事で紹介したような事例はいまは必ずしも一般的なものではありませんが、今後のマーケティング戦略の主流になっていくのは間違いないでしょう。